「相続分放棄」とは? ~ 相続放棄と相続分放棄の違い(後編) ~

こんばんは。

相続・遺言コンサルタント 司法書士の鈴木敏弘です

今日は昨日の記事のつづきからですえんぴつ
 
 
→2 昨日の記事「相続分放棄について(前編)」マウス

マイナスの相続財産を放棄できないのに、なぜ「相続分放棄」を行なう意味があるのか?

この「相続分放棄」が行なわれることが多いのが、不動産登記の名義変更のみを簡易的に、スピーディーに行なう場合です。
「特別受益証明書」(相続分なきことの証明書)、などが「相続分放棄」の一例としてあげられます。
→2 「特別受益証明書」とは?マウス

証明書には通常、下記のような記載がなされています。

「私は、被相続人(故人)●●●の死亡により相続が開始された財産につき、共同相続人の一人であったところ、被相続人●●●の生前に、すでに被相続人●●●から相続分相当の財産の贈与を受けていた。

そのため、被相続人●●●の死亡により相続が開始された財産につき、私が受ける相続分はないことを証明いたします。」

実際に、被相続人から生前に贈与を受けていたならば、納得できる部分もあるかもしれません。
また、そもそも相続財産の中に借金がないのならば、心配する必要もありません。

しかし稀に、他の相続人が意図的に借金の存在を隠している場合や、思わぬ事態が生じる場合もあるのです

たとえば、長男が家を継ぐこととなり、家の財産価値は1億円あったとします。そして、その他の相続財産として借金が7千万円あったとします。

家を継ぐ長男が家を相続する代わりに、借金もすべて支払っていくという条件付で、二男と三男は納得して「特別受益証明書」にサインペンをしました。

それから数か月後、二男と三男のもとに、借金を支払うようにと内容証明郵便が届きました手紙(灰色)

慌てて送付元に連絡をすると、借金(マイナスの財産)は相続人同士で勝手に処分したり、譲渡したりできないのだ、という説明を受けました。
さらに、実家は手形不渡りとなっており、すぐにでも借金を返済してほしいとのこと。

この場合、借金先の会社の言うとおり、二男、三男にも借金を返済する義務があります。
二男と三男は、借金分も放棄したと勘違いしてしまっていましたが、そうではないのです。

借金があるとはじめからわかっているのならば、最初から「相続放棄」を選択し、家庭裁判所に申立てを行なうべきだったのです

もしくは、先に借金先の会社と相続人全員で話し合いを行ない、借金の返済については、今後は長男だけが負担していくという契約(免責的債務引受契約)を締結する、といった方法もあります

ここまでお読みいただければおわかりかと思いますが・・・
「相続分放棄」をする際には、十分ご注意ください

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